ホーム議会レポート春日市個人情報の保護法に関する法律施行条例の制定についての反対討論(要約)

議会レポート

子どもや高齢者が安心して暮らせる春日市に

2023年3月議会

春日市個人情報の保護法に関する法律施行条例の制定についての反対討論(要約)

吉居恭子の反対討論

1番 日本共産党 よしい恭子です。

私は、第4号議案 春日市個人情報の保護法に関する法律施行条例の制定について、反対の立場で討論を行います。

個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)」は、個人の情報を適切に保護するための決まりが明記された法律です。2003年に成立し、2005年に全面施行されました。

個人情報保護法の目的は、大きく分けて2つあります。1つは、個人情報が持つ権利と利益を保護するためです。もう1つは、個人情報を適正かつ効果的に活用するためです。

個人情報保護をめぐっては地方自治体が国に先駆けて、条例でルールを定めていて、自治体の多くが個人情報は本人から直接収集することを原則とし、人種や思想・信条などの「要配慮個人情報」の収集は、原則として禁止しています。

これまで自治体は、条例で国よりも厳しい個人情報保護のルールを定めてきましたが、国のルールにこうした原則はありません。今回の見直しで、より緩やかな国のルールに一元化され、個人情報保護に関するかなりの規制緩和となり、個人情報保護が大きく後退するおそれがあります。また、政府が収集した個人情報を、官民で広く活用しようとしていますが、個人情報は利用目的を明確にして収集し取り扱うもので、経済活動などへの二次的な利用は本来の目的ではありません。

自治体は住民の信頼を得て行政サービスをしていくことが一番重要なのに、集めた個人情報を民間がデータとして積極的に活用するということになれば、住民側の不信を招くことになりかねません。  

本来の目的ではない二次的な利用のために、個人情報保護の規制緩和をするのは本末転倒です。そのうえで「集められた個人情報が、犯罪捜査や治安維持のために必要だという理由で、結果的に政府の監視活動に使われるのではないかという懸念もあります。

今回、新たに導入される「匿名加工情報」の仕組みは、匿名加工により、個人を識別できないように加工したら、個人情報ではない、と定義されています。しかし、どんなに加工されていたとしても、そのもととなる情報が個人のものであることに、違いはありません。

自治体は匿名加工制度の創設によって管理リスクが増し、過重負担となる問題も引き起こします。

また、地方自治体が保有する情報には、教育、健康診断、介護サービス、子育て支援といった住民サービスに直結する個人情報や、きわめて慎重な配慮を要する個人情報が含まれています。

匿名化の作業を外部委託することになれば、膨大で詳細な加工前の個人情報が、委託先の外部法人へ渡ることになります。実際に、NHKの委託先法人から契約者情報が詐欺グループに漏えいした例や、リクルートキャリア社が、学生向け就職情報サイト「リクナビ」を利用する学生の閲覧履歴等をAIで分析し、採用企業に販売していた事件もありました。個人情報保護法の見直しにおいて、リクナビ事件のような事例は起きないとの保証はなく、個人の権利利益が実質的に守られるものになっていません。

反対するもう一つの理由は、地方自治が侵害されるという問題です。当時の担当大臣が、「自治体の既存の個人情報保護条例は一旦リセット」していただく、と発言したことに象徴されていますが、地方の個人情報保護条例を「一旦リセット」し、全国共通のルールを設定したうえで、法の範囲内で独自の保護措置を最小限で許容するとしました。

国よりも自治体の方が、より大量の住民の個人情報を保有しており、とりわけ要配慮個人情報を国よりもはるかに多く保有して個々の事務を行ってきました。国の個人情報保護制度が変質してきた背景には、多種多様な個人に係るデータをビッグデータとして利活用し、データビジネスの活性化につなげたい産業界の意向があります。これらの動きに対して、地方自治体側では、個人データの広範な利活用に道を開く、個人情報保護法制の一元化に慎重な姿勢を取ってきました。自治体が条例で積み上げてきた仕組みを、国が「リセット」し、国に一元化させることは、地方自治をないがしろにするものと言わざるを得ず、決して賛成できません。

以上、反対討論といたします。

議会レポート一覧

ページトップ