(第1号意見書案)
学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書(案)
現在、教育の現場では、「誰一人取り残すことのない公正に個別最適化され、創造性を育む学び」の実現を目指す「GIGAスクール構想」の一環で、児童生徒に一人一台の情報端末の貸与、並びに校内の高速ネットワーク整備が進められております。また、これらのハード面の取り組みに加えて、児童生徒の「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実や、「特別な配慮を必要とする児童生徒の学習上の困難の低減に資するもの」として、「デジタル教科書」の導入も進められようとしています。
「GIGAスクール構想」に対しては、ICTを活用したオンラインでの学習支援や宿題の配布、さらにデジタル教科書やデジタルドリルの活用など、各人の状況に合わせた学習を推進することにより、多様な学びの実現と教員の負担軽減などへの期待が高まっています。
一方で、全ての教員が情報端末を活用した一定レベルの授業を行う事ができるように、個人情報の取り扱い及び管理も含めた教職員の資質の向上が求められます。
さらに、デジタル教科書のみを使用した場合には、学習の基本能力である「読解力」の低下が危惧されます。そこで、各自治体において、Society5.0時代を生きる子どもたちに相応しい教育を推進するため、学校教育にICTを浸透させ、さらなる教育の充実を図る為のデジタルトランスフォーメーション(以下DX)の実現に向けて取り組んでいくべきです。
そのために、以下の事項について迅速に対応することを強く求めます。
記
- 情報端末の利活用、個人情報に取り扱いなど、教育DXに対応する教職員研修のあり方について検討を進めること。
- システムやソフトウェアの整備、情報端末や通信整備の修繕や定期更新など、教育DXに関する学校教育予算の充実・確保とそのあり方について検討を進めること。
- 様々な会社の情報端末とデジタル教科書と個人認証システムの互換性を確保するため、統一規格について検討を進めること。
- よく聞き、よく読み、よく書くなどの生涯学び続けるための基本的な「学ぶスキル」を身につける上で、紙面活用と対面学習の併用を検討すること。
吉居恭子の反対討論
私は、教育におけるICTの活用、情報通信技術の活用そのものは教育の一つのツールとして必要であるとの立場ですが、インターネットに接続できる端末を児童生徒一人一人に持たせるということは、サイバー攻撃や有害な情報、第三者からの脅威にさらすことにもつながるため、個人情報を保護することはもちろんのこと、子どもたちをそうした有害なものから守るという観点からも、セキュリティー対策がとても重要であり、一朝一夕に安全性を担保できるものではないと考えます。
教育のICT化において日本がOECD諸国で後れをとっているからといって、一人1台端末が子どもの心身の健康や教育に及ぼす効果や影響についての研究・検証が十分に行われてない上、大きな地域格差も存在する中で、全国一斉にこれまでの教育を一変させるような拙速な進め方をするべきではありません。
また、教員の多忙化とその軽減が問題となる中で、学習に加え、学校におけるコロナ対策、いじめ、不登校、発達障がい、メンタルヘルスや家庭環境に課題を抱えた児童生徒への対応など、日々子どもたちに向き合っている教職員に対し、ICT活用のための研修を急ぎ強化することは、教職員の多忙化を助長させ、疲弊させることにつながりかねません。
そのため、教育におけるICT活用は、教員の自主性・自律性を前提とし、子どもと教員、子ども同士の生きたやり取り、教員自身の深い教材研究で実現する授業の質、大きな教育力を損なうようなことのないよう慎重に進めるべきと考えますので、この意見書に反対します。
(賛成18.反対1で、原案可決)