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2022年6月議会

2022年6月議会に採択された意見書

6月議会で4つの意見書が採択されました。


障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の改正を求める意見書

「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(以下、「障害者虐待防止法」という。)」は、平成24年10月1日の施行から9年が経過した。障害者虐待防止法の施行により、障害者虐待の防止に関する理解は着実に進み、相談・通報件数は年々増加傾向にある。しかし、令和2年3月には神戸市内の精神科病院における看護師らによる患者への集団虐待など痛ましい事件が発生するなど障害者虐待事件は後を絶たない。また、新聞報道等によれば、この事件を受けて厚生労働省が行った全国調査では、虐待が起きた病院が自治体に通報したケースが半分以下といわれている。障害者に対する虐待は障害者の尊厳を損なうものであり、いついかなる場所であっても断じて許すことはできない。今後、障がい者への虐待を根絶していくためには、国などで行われている障害者虐待防止・権利擁護研修制度の拡充や取組参考例の周知を更に進めることとともに、精神科病院など医療機関においても、障害者福祉施設などと同様に、虐待発見時の通報義務の対象の拡大や、通報した者に不利益等が及ばないよう保護的な措置を講じることなど、障害者虐待防止法の改正が必要だと考える。

よって、本市議会は国会及び政府に対し、下記の事項が速やかに実現されることを強く要請する。

  1. 障害者虐待防止法に規定する虐待発見時の市町村への通報義務の対象に、「医療機関従事者による障害者虐待」を加えるとともに、通報者に関する保護を規定すること。

以上、地方自治法第 99 条の規定により意見書を提出する。

令和4年6月22日

春日市議会

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣


シルバー人材センターの安定的事業運営のための適切な措置を求める意見書

現在、福岡県内には約二万五千人のシルバー会員がおり、会員は自治体や企業、家庭などからの仕事を受け、地域社会の中で活躍する「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき設立された営利を目的としない団体であります。

また、シルバー人材センターは、地域社会の「手伝ってほしい」との声を受け、シルバー会員の「誰かの役に立ちたい」との気持ちへつなげる「架け橋」ともなっています。

しかし、令和5年10月に予定されている消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されると、現在年間課税売上高1千万円以下の事業者として消費税納入義務が免除されているシルバー会員は、適格請求書を発行することができないことから、シルバー人材センターでは、仕入税額控除ができなくなり、新たに預かり消費税分を納税する必要が生じますが、公益法人であるシルバー人材センターの運営は収支相償が原則であり、運営上新たな税を負担する財源はありません。

人生100年時代を迎え、国をあげて生涯現役社会の実現が求められている中、シルバー人材センターの役割は一層重要になってきており、報酬よりも社会参加・健康維持に重きを置いた「生きがい就業」をしている会員に対し、形式的に個人事業主であることをもって、インボイス制度を適用することは、地域社会に貢献しようとする高齢者のやる気・生きがいを削ぎ、ひいては地域社会の活力低下をもたらすものと懸念されます。

よって、国におかれましては下記の事項を確実に実現されますよう強く要望致します。

シルバー人材センターと会員間の取引は一般の商取引とは異なることを考慮し、シルバー会員配分金における適格請求書等保存方式(インボイス制度)の適用除外等、シルバー人材センターの安定的事業運営のための適切な措置を講じられること。

以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出いたします。

令和4年6月22日

春日市議会

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
財務大臣
厚生労働大臣
経済産業大臣
内閣官房長官


主要農作物種子法にかわる福岡県独自の条例制定を求める意見書

平成30年4月1日、主要農作物種子法(以下「種子法」という。)が、国会審議を経て廃止されました。

種子法は、戦後の日本で、米や大豆、麦といった主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を「国が果たすべき役割」と定めた法律で、同法のもと、地域に合った良質な種子が農家に行き渡るよう、各都道府県が責任を持って種子を開発、増殖してきました。これには、地域環境に応じた品種や、よりよい農産物の開発に、公的に取り組んできたという側面もあると言えます。これは、戦中から戦後にかけて食糧難の時代を経験した日本が、食料確保のためには種子が重要であり、国は「国民に食料を供給する責を負う」という使命を持っていたことが思慮できます。しかし、今回、種子法が廃止されたことで、新たなる品種の開発や、増殖に係る取組みは後退し、優良な種子の生産と農家への供給は不安定となり、ひいては国民に、食糧価格上昇という新たな負担を求めることとなるのではないかと危惧する次第です。一方、種子法の廃止は、「民間の品種開発意欲を阻害する」との趣旨によるもので、国は、民間の活力を最大限に生かして開発・供給する体制を整えることで、資材価格を引き下げ、国際競争力を高めようとする狙いですが、地域の共有財産である種子を民間に委ねた場合、種子の独占や改良品種の特許権による市場支配、優良種子の価格上昇など、様々な問題が発生することも念頭に置かなければなりません。福岡県では、「福岡県稲、麦類及び大豆の種子の安定供給に関する基本要綱(平成30年4月1日)」を制定され、引続き、優良な種子の安定的な生産及び供給に取り組むという意志を明確にお示しされたことに対しましては、深く敬意を払い、強く賛同いたしているところです。しかしながら、優良な種子の安定的な生産及び供給を恒久的に取り組むという観点から、要綱のみでは不安を拭えません。つきましては、福岡県農業を後退させることなく、更に前進させるためにも、種子法に代わる県独自の条例を制定され、優良な種子の安定的な生産及び供給を行うことで、農業者や消費者が安心、安全に生活できる体制づくりを強く要望いたします。

福岡県農業を後退させることなく、更に前進させるためにも、種子法に代わる県独自の条例を制定すること。

以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出いたします。

令和4年6月22日

春日市議会

福岡県知事


地方公共団体情報システムの標準化に向けての意見書

吉居は反対 → 反対討論

政府は、令和2年に「地方公共団体における情報システムについて、クラウド活用を原則とした標準化・共通化を今後5年で確実に実現していくための取組を全力で推進する。その際、複数年の取組として地方公共団体が予見可能性をもって計画的・安定的にデジタル改革を進めることが可能な形での財政的な支援を行う」ことを閣議決定し、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」を制定した。

近年、社会ではDXが進み、地方公共団体においてもDXの推進が図られている。そこで、国民の命と暮らしを守る安心と希望の総合経済対策において、「地方公共団体情報システムの標準化」が決まり、令和2年度、3年度に、地方公共団体が円滑にシステムを導入するための経費として、約1,825億円を基金として計上した。

国では、令和4年夏までに、住民基本台帳や固定資産税など20業務について、システムの各仕様の策定を行い、地方公共団体は、令和5年から令和7年にかけて、Gov-Cloud(ガバメントクラウド)の利用に向け標準準拠システムに移行していく予定となっている。地方公共団体は、新型コロナウイルスの影響で、財政状況も厳しく、また、デジタルの人材不足も深刻な状態となっている。また、高齢者はデジタル化になれていない方も多く、ネットの環境が整っていない地域もある。政府においては、システム導入に向けて、地方公共団体の状況を踏まえ、下記の事項を実施するよう要望する。

  1. 国は、令和7年度までとした移行の目標を目指す上で、必要に応じて柔軟な対応を検討するとともに、移行に伴う適切な財政支援と丁寧な情報提供を行うこと。
  2. 情報システムの保守・運用コストなど総合的な支援を検討するとともに、都道府県に対して、市区町村への必要な助言や情報提供などを丁寧に行うよう指導すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

令和4年6月22日

春日市議会

総務大臣デジタル大臣


「地方公共団体情報システムの標準化に向けての意見書」への反対討論

私は、「地方公共団体情報システムの標準化に向けての意見書」案について、反対の立場で討論をします。

「デジタル関連法」は、国や地方自治体のシステムや規定を標準化・共通化して、個人情報を含むデータの利用を強力に進め、行政保有の個人データを企業に開放し、企業の利益につなげるためのもので、経済界から要望されたものでもあります。

関連法成立当時のデジタル担当大臣は、「国や自治体が保有する有用な情報をオープンデータとして整備・公表したり、デジタル社会における基幹的なデータベースとして、多様な主体が参照できるよう整備していく」と述べ、この法案の狙いが、特定の企業の儲けのために、地方自治体が持つ大切な個人情報を利用することにあると語っています。

国・自治体が保有する個人情報は、公権力を行使して取得、申請・届け出に伴い義務として提出されたもので、企業が保有する顧客情報とは比べ物にならない、多岐に渡る膨大な情報量です。

さらに、個人情報の収集・利用の原則は、① 利用者の特定、② 事前の本人同意、③ 利用目的の範囲内での収集・利用です。しかし、「行政のデジタル化」により民間事業者を対象に、本人の同意を得ずに、販売も含んだ外部提供できる「匿名加工情報」制度(オープンデータ化)を創設。国の行政機関、国立大学、国立研究機関等の独立行政法人を対象にした「非識別加工情報」制度も導入し、匿名・非識別加工によって、本人の同意なしに、第3者提供・目的外利用を可能にしています。

そのため、自治体がもつ教育、健康診断、介護サービス、子育て支援といった住民サービスに直結する個人情報を、匿名加工情報制度(オープンデータ化)と情報連携(オンライン結合)させようと、オープンデータ化を都道府県・政令都市に義務化(他の団体は任意)し、全ての自治体に情報連携の禁止は認めないとしています。

この間、集積された個人のデータが本人の知らない所でやり取りされ、分析や数値化(プロファイリング・スコアリング)され、人生に大きな影響を与えるような、本人に不利益な使い方をされる問題が噴出してます。2019年には、リクルートキャリア社が、学生の閲覧履歴等をAIで分析し、内定を辞退する可能性をスコアにして、採用企業に販売していた事件が発生しました。一般企業でも自治体でも、極めて個人的な情報が、氏名や住所・生年月日などと共に漏えいする事件も、後を絶ちません。

プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権です。個人情報保護法は、個人の権利を明確にしなければなりません。どんな個人情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利(自己情報コントロール権)を保障することが必要です。

国は、マイナンバー制度普及のため多額の予算を使っていますが、6月1日現在の普及率は全国では、44.7%、東京でさえ48.4%と半数未満です。そのことは、情報漏えいや個人情報を目的外に使用されないという信頼性が国民の間で共有されていない事を裏付けるものだと思われます。

2020年版情報通信白書によると、企業などが提供するサービスを利用する際に、個人データを提供することについて8割が「不安を感じる」と答え、インターネットを利用する際に感じる不安については「個人情報や利用履歴の漏えい」の割合が88.4%にのぼっています。個人データの活用については「便利・快適性を重視すべき」が、「どちらかというと」を合わせても22%しかないのに対し、「安心・安全性を重視すべき」は、「どちらかというと」を合わせて79%になります。

現に、デジタル化が進んだ諸外国では、国民の権利として情報の訂正や削除権、情報提供の透明性、違反への罰則、情報漏えい時の罰則・補償などが明確化されています。

「自治体の個人情報保護条例は一旦リセット!」と、暴言ともとれる答弁をした担当大臣を持つ我が国とは違い、信頼性が担保されています。こうした個人情報を保護する確かな裏づけが無い上に、政府に都合の悪い情報は黒ぬりにして隠したり、改ざんをするなど、わが国は、国民の信頼性が得られるような状況にはありません。

情報は、集積されればされるほど利用価値が高まり攻撃されやすくなり、また、情報漏えいのリスクを高めることになります。人はミスを犯すものです。その時、仮に匿名加工情報であっても、紐付けされた情報が多ければ多いほど個人が特定されてしまいます。

デジタル関連法では、国と自治体の「情報システムの共同化、集約の推進」を掲げ、自治体に対し、国が決めた基準に適合したシステムの利用を義務付けました。記載項目や住所・仮名の表記など統一した標準化したデータの方が利用しやすいためです。情報システムの標準化に向けて、国は膨大な量の作業を自治体に押し付けます。その対象となっている基幹システム事務のほとんどが自治事務です。情報を標準化し、巨大なシステムを構築するとなれば、業務委託が発生し、さらに、情報漏えいのリスクが高まるという悪循環に陥ります。

以上、「地方公共団体情報システムの標準化」を進めることが、国民にとっては不利益であるのに、これを無理やり進めるには地方自治体の仕事量が膨大になるという理由で、国民が払う税金が原資の国の予算を使って、自治体に財政支援や助言、情報の提供をさせるというのは、あまりにも国民の思いと相容れないやり方ではないでしょうか。

よって、私は、この意見書には反対です。


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